この野郎(松尾潤) 、絶対酔っぱらって記事書いてるだろう!
J1で3年踏ん張った山形と1年で陥落した甲府が舞台をJ2のステージに移して対戦した第30節。甲府は山形とどうも相性が悪いのか。昨年はJ1で1分1敗だったけれど結局は今年も1分1敗。勝点1しか稼げなかった。試合前にゴール裏の山形サポーターのコールが「ヤマガタ、アキオ」に聞こえ、「アキオ」ではないことは分かっているのだけれど、なんだったのかは思い出せない。気持ち悪いので、山形担当S氏に電話して聞くと「ヤマガタ、ディオです。ディオはモンテディオのディオです」と教えてくれた。同時に、彼にこの質問をするのが5回目くらいだということも思い出した。そして、石川竜也の左足の凄さも試合開始後まもなく強制的に思い出させられた。直面すると記憶以上に凄いと感じるのは駒野友一(磐田)同様。山形戦は思い出すことが多い。石川なら多くのCMでスゴ技を見せるベッカムに代わって出られるはず。
前半開始直後から石川の左足がロングボールを蹴るたびにヒヤヒヤさせられたが、第27節以来の先発だったドウグラスが、山形の選手がトラップした瞬間を狙ってうまく対処して何度も決定機の芽を摘んだ。第22節以来の先発だった冨田大介も安定感があったし、なにより6連勝中にググーッと安定感を増したGK・荻晃太の守備力が素晴らしかった。一時は城福浩監督がサブの岡大生を先発させることを考えたのではないかと思える時期もあったが、荻がレベルアップしてレギュラーの立場を堅固にしている。今ではGKを替えるというアイディアを誰も考えないほど荻は素晴らしい。フィールドプレーヤーが、「ヤラれた」と思ったシュートをきっちり防いでくれ、相手のシュートミスにも恵まれる状況のGKを守護神と呼んでいいのだと思う。誕生日だけでなく、普段の練習帰りにも多くのプレゼントを貰う荻だけに、色々な女神から愛されているんだろう。キィーッ。
前半はお互いに決定機がありながらも決めきれなかったが、決定力不足という印象ではなく素晴らしいチーム同士がレベルの高いプレーを攻守で見せた結果の0-0の前半だった。残念だったのは三幸秀稔のプレーを後半に見られなかったこと。後半開始から三幸に代えてフェルナンジーニョを投入した理由を城福監督は「三幸は悪くなかった。ただ、もう少し長くプレーできる信頼を勝ち得て欲しい。攻守において悪くないが、さらにもうひとつのエンジンとしてフェルナンジーニョのアイディアと精度に賭けた」と話した。城福監督の言うことに対して大抵は納得するけれど、三幸は後半15~20分くらいまで使って欲しかった。三幸はボールをキープできるからタメができて周りの選手が動き出しやすくなってゴール前の崩しが見ていて面白い。城福監督は堀米勇輝に対してもそうだが若くて才能ある選手には特に厳しいので、三幸がどんな課題を見つけることができたかが今後は重要になるだろう。
クロスの精度が低かった甲府はボールを運んだ割にシュート数が増えなかったが、山形は石川と対面する福田健介のアプローチが遅れたり、マークの距離が遠かった時には決定的な場面を作った。裏返せば甲府ディフェンスの課題だが、GK・荻が52分の林陵平のヘディングシュートを指先で触ってCKに逃げるなど最後の最後の部分でチームメイトがカバーすることができた。それにプラスして、佐々木翔の1対1の対応も良かった。粘り腰の守備で何度もボールを奪ったから山形の決定機を減らすことができた。こんなに褒めるのは試合前に佐々木のお婆ちゃんが焼鳥をくれたからではない。甲府は本当にいい大卒ルーキーを獲得したと思う。これでクロスの精度が高まればポルシェを買えるような選手になれるはず。
後半の時間が進むにつれてお互いに選手交代のカードを切りたいのだが、0-0だけに判断が難しかった。それでも両監督ともに攻撃的なカードを切り、その中で最も効いたのは残念ながら甲府の片桐淳至ではなく、山形の萬代宏樹。ロングボールでCBのドウグラスに競り勝てるヘッドの強さは脅威で、ドウグラスも悔しい思いをしたはず。しかしコンビを組む冨田がアディショナルタイムのブランキーニョのシュート(萬代のヘッド経由)をギリギリで足に当ててCKにするなど、ここでも最後の最後では守れたし、チョイトだけ運にも恵まれた。ただ、今のうちに守備の修正で突詰めるべき部分はあるだろう。いつまでも運やサポーターの想いだけで失点を防ぐことはできない。
試合後の監督会見は対戦相手の監督のキャラクターの一端を知る場でもある。会見室に入ってくるときに「お願い致します」と言って奥野僚右監督が入ってきたときは(すごく丁寧な人)という印象を持つと同時に驚いた。現役時代(鹿島)のテレビで見た印象から想像していたし、関西人(京都出身)という先入観とも違っていた。いつもは金釘流の達筆風のミミズ文字で会見をメモするのだが、今回はずっと奥野監督の顔を見ながら話を聞いて、ICレコーダーに頼ることにした。黒いシャツに黒いキャップを被る姿が一見「ケビン山崎」風なのにも興味を持ったが、「全員攻守」という言葉を発明するところは本質を追求する指導者という印象。キャップをとって会見に臨む姿と表情は学校の誠実な先生のようでもあった。所々言葉を切って、1~2秒適切な言葉を探して話す。普通はテープ起こし(ICレコーダーだけど)をすると、人が喋ったままでは文章にならない部分が何箇所もあって継ぎ接ぎして文章にするのだけれど、奥野監督の話し言葉はそのままで文章になりやすい。松本の反町康治監督のように皮肉や自虐ネタで笑わせる場面はないけれど、普段山形ではどんな雰囲気で選手に接しているのか興味が湧いた。
他の対戦結果を知って、「あのシュートが決まって勝ってたらなぁ~」ってしみじみ思ったのは甲府サポーターだけではないはず。山形も湘南も千葉も、皆そう思ったはず。引き分けたチームは昇格レースで少し優位な順位に上がるチャンスを逃したが、東京Vと京都が敗れておりプレーオフ圏内争いは更に拍車がかかった。今節勝ってプレーオフ圏内サロンのメンバー入りを果たした横浜FCと栃木が俄然やる気になっているはずで、よーく考えれば甲府の次の対戦相手は横浜FC。連勝が止まって引き分けが増える傾向が今年のJ2にあるだけに、山本英臣が戻ってくる次節は勝たなければならない。横浜FCはスポルトでよく取材されるチームだけに、(来るのかどうか知らないけれど)フジの女子アナの前で甲府のいいところを見せつけたい。え~、山形明男さんも頑張ってください。