あらきそば
村山市大久保にあるそれは、山形の生蕎麦の代表格といっていいほどの蕎麦。
というのも、いわゆる山形の蕎麦といえば「太く硬く黒い」田舎蕎麦を指すことが多い。
昔から村山や最上の山間地は痩せた耕地で育てられるものといえば蕎麦ぐらいしかなかった時代にできた食文化だと思われる。
山形市内などに見られる更級粉の多い蕎麦「大名蕎麦」は山形の城下町から広がったのだろうか?
嫌いではないけどどうしても蕎麦の香が落ちる。
山形に来てあれらを山形の蕎麦と思い食するのはちょっともったいない気がする。
生蕎麦については自分でも打つし、かなり好きなのでちょっと思ったことを書いてみる。
その食文化を感じるのは、山間地の民家でおもてなしを受けたとき。
春夏秋冬を問わず、自家製の手打ち蕎麦と山菜料理でおもてなしをしてくれる。それにはちょっと変わった共通点がある。まず、蕎麦だがもちろんそば粉100%。粉も良いものだけは使わないのでちょっと黒味がかったもの。太さはバラバラであえて太めに切る。(この蕎麦を「蕎麦きり」と呼ぶ。)
なんと言っても「たれ」が特徴的。
鶏ガラだしを使うのです。
卵を取るために飼っている鶏は年をとると卵があまり産めなくなります。これらを「ふるっぱ「たぶん古羽」と書く。」と呼ぶんだけどこれをつぶすんですねえ。
この「ふるっぱ」はとにかくだしが出るのです。身は歯ごたえがよく旨味をまし、油は黄色身を帯びて超濃厚な味を作り出します。
この鶏がらだしとかえしを合わせて作った付けダレを温かいまま使い、これに蕎麦を浸して食べるというのがこのへんの食べ方ですね。
もちろん、身を削いださまざまな骨は生醤油で煮込んで、骨にこびりついた肉を酒の肴としてほおばります。
肝、皮、などの内臓系は大変美味です。
動物性タンパク質といえば、こう言う摂取の仕方しかなかったようです。冬は長い間雪に閉ざされるし、自給自足が主だった昔はこの貴重な動物性タンパク質をおもてなしとして振舞ったようです。
そういう文化が多分、最上周辺のそばを作ったような気がします。
嘘かホントか、この辺の方々には古くから「鶏」を食してきた遺伝子が引き継がれているようで、新庄「一茶庵」を代表とする鶏ガラスープのラーメンが出来上がり、そして好むのでございます。
どんべーすかんこねーけどはあ(どんどはれbyNHK)
話は戻ります。
この「あらきそば」は1983年ごろから行き始めました。当時は今ほど客も多くなくひっそりした蕎麦屋でした。萱葺きで昔作りの店内。低い木製の長机にいい色を出している太い柱、梁。
その雰囲気だけでも蕎麦がおいしく感じられます。
写真は薄盛りの1.5人前。蕎麦好きなら普通に食べられます。
昔よりも柔らかくなったような気がする。前には太く黒くコシがあったような。だしはかつおだし。甘くなく、蕎麦湯までおいしくいただけます。
もう観光客メインのお店になってしまったので土日は並ぶこと間違いなし。
たぶん、蕎麦処山形の原点と言うべき蕎麦や。
また「にしんの甘煮」が村山地区では蕎麦に定番の付け添え。
このニシンがなぜ定着したのかも、私的考察ではもう答えが出ているので「新庄のかど焼き」と合わせて機会があるときに。
村山市大久保甲65